Dialogue
対談 学生╳教員

学生久保尋之 准教授


「可視化」する技術で
AIの可能性を広げる

──光と情報が拓く未来

  • 久保准教授
    「見えないものを“見る”コンピュータビジョンでAIを人間のより良い相棒にしたい。」

  • 学生YKさん
    「AIをどう生かしたら社会課題の解決につながるのか、そのヒントを知りたいです。」

  • 学生YFさん
    「根っからのゲームおたくなので画像系のお話を聞けるのがとても楽しみです。」

見えないものを“見る”?

QYK:先生の研究テーマである「見えないものを撮影する技術」とは、具体的にどんなものなのですか?

A久保:例えば、肉眼では見えない人間の血管の様子や表面的には同じような色に見える液体(牛乳と液体石鹸など)の違いを成分によって識別するなど、通常のカメラでは撮影できない世界を可視化する科学技術です。被写体にプロジェクターで光を当て、反射してきた光を独自のアングルから撮影することで血管から反射してきた光だけを選択的に捉えて画像にします。また、牛乳と液体石鹸では成分の違いにより内部の「光の透過・散乱」具合が異なるため、戻ってくる光からその違いを可視化することも可能です。これらの写真をAIに学習させれば、「牛乳」と「液体石鹸」を見分けられるAIができ、生産ラインの品質管理などに生かされるかもしれません。

見えないものを撮る
被写体にプロジェクターで光を当て、反射してきた光を独自なアングルから撮影することで血管から反射してきた光だけを選択的に捉えて画像にする。肉眼では見えない血管がはっきりと見える(左)。人間の目では識別できない「白い液体」の成分を見分けることもできる(右)

「良いデータ」が、AIを賢くする

QYF:見えないものを撮影するといえば、レントゲンやMRIなどもあると思います。AI時代に、「見えないものを撮影する技術」は、どんな意味があるのでしょうか?

A久保:私の研究は「コンピュータビジョン※Tips」という分野で、AIの入り口にあたるデータの収集方法という面に比重を置いています。レントゲンには被ばくのリスクがありますし、MRIやCTスキャナーは大型かつ高額な装置です。市販されているプロジェクターとカメラで構成されるこのシステムなら低コストで作れて、持ち運びも簡単なので災害現場での緊急医療や家庭での健康管理にも活用できると考えています。
AIは大量のデータを学習し、正しいと思われる答えを導き出す技術ですが、そのデータが悪ければ正しい答えには辿り着きません。見えない世界をAIに見せる技術が整えばAI学習の精度をさらに高めていくことができるでしょう。

Tips

コンピュータビジョン
コンピュータに人間の視覚機能を持たせ、画像や動画から情報を認識·理解·分析させる技術。顔認識、自動運転、製品検査など、さまざまな分野で利用されている。

AIは人の仕事を奪う?

QYK:AIの進歩によって、人の仕事がどんどん奪われていくと言われていますが、それは本当でしょうか?

A久保:そういう面は確かにあると思います。でも、正確には仕事の仕方、仕事の質が変わると言った方がいいでしょう。私は「アニメ制作効率化のための自動着色技術」の研究もしているのですが、人間が行うと膨大な労力を要する線画への着色作業をAIに任せようとしても、精度を100%にすることが困難だと分かりました。そこでAIがあらかじめ色の候補を絞り込み、その中から人間が正しい色を選ぶという方法で高い精度と作業時間の短縮を実現する研究にシフトチェンジしました。AIと人間は互いに補い合う相棒になれるということです。

「AIを使う人」になるために必要なこと

QYF:AI時代を生きるために、私たちはどんな力を身につけるべきでしょうか?

A久保:AIを使いこなすには物理、数学、光学、プログラミング、英語など、幅広い教養と基礎力が必要です。何を調べればいいのかが分からなければAIに質問することさえできませんし、数学や物理の前提を理解していないとAIの答えが正しいかどうかも判断できません。情報・データサイエンス学部で学ぶ内容は、その判断ができる人になるための基盤です。AIに質問すれば答えは返ってきますが、“何を聞くか”は人間が決めることであり、問いを立てる力こそ価値になります。従って、大学では多様な分野に興味を持ち、その興味を自分の強みに変換できるように掘り下げてほしいと思います。

左から久保准教授、学生YKさん、学生YFさん

対談を終えて

見えないものに気づき、判断できる力を育ててほしい

久保:AIが注目される時代ですが、重要なのはAIそのものではなく、どう使うか、何を判断させるかです。世界は想像以上に複雑で、すべてを自動化することはできません。だからこそ、人が考え、問いを立て、AIと協力する余地があります。大学での学びを通して、見えないものに気づき、判断できる力を育ててほしいと思います。

データサイエンスで世界に幸せを届けたい!

YK:高校でプログラミングに出会い、この学部なら社会課題に「総合知」で向き合えると思って進学しました。久保先生の“見えないものを可視化する”話は、課題の本質を見抜く力そのものだと感じました。いつか「世界に幸せを届けたい」という夢に、データサイエンスで近づきたいです。

ゲームオタクの僕が社会に貢献するチャンス!

YF:幼い頃からゲームが好きで、プログラミングやゲーム制作も経験してきました。久保先生の話で、AIは“何をどう撮るか(入力)”で賢さが変わると腹落ちしました。データサイエンスやアルゴリズムも磨き、ゲーム×AIを社会貢献につながる技術へ育てたいです。

Associate Professor

久保尋之准教授

久保尋之 准教授

千葉大学大学院情報学研究院 情報・データサイエンス学部准教授。2012年、早稲田大学 大学院先進理工学研究科にて博士(工学)取得、その後、キヤノン株式会社、奈良先端科学技術大学院大学 助教、Carnegie Mellon University Robotics Institute 客員研究員、東海大学特任講師などを経て、2022年より千葉大学に着任。

Student

学生YKさん

学生  
YK さん

北嶺中・高等学校出身
千葉大学を選んだのは自分が大学でやりたいと思っていたことと完全にマッチしたから。また、自己アピールが得意だったこともあり、公募方式なら絶対合格できるという自信もありました。

Student

学生YFさん

学生  
YF さん

千葉県立船橋啓明高等学校出身
幼少期からゲームに親しみ、プログラミングやデータサイエンスを通じて社会に役立つ技術を探究。写真部、CCS、チェス研究会、軽音楽部の4つのサークルに所属し、創作・思考・表現の幅を広げている。エンタメとAIを結びつけ、社会貢献につながる研究を目指す。