
健康+因果推論
人のデータを解析して、
健康で長生きできる社会を目指す!
疫学因果推論ゲノム情報がんリスク健康寿命
健康寿命を延ばすためにデータを活用する
私の専門分野は疫学です。疫学とは人間の集団の中で起こる健康に関係する出来事の種類、頻度、要因などの法則を特定して対策に繋げていく学問領域のこと。中でも食と健康に注目しており、例えば「発酵性大豆食品(納豆、味噌など)を食べると長生きできるのか?」「食事によって睡眠の質が変わるのか?」などの研究に携わってきました。
エビデンスレベルが高い研究結果を得るためには、ある集団を長期間にわたって調査しなければならず、集団のボリュームも大きいほど信頼度が高まります。時には10万人の日本人の集団、30万人のアジア圏の集団を対象にデータを収集することもあり、そのデータの分析・解析には機械学習や因果推論※1をはじめとしたデータサイエンスの手法が不可欠なものになっています。

Tips
因果推論
2つの事柄の因果関係を統計的に推定していく統計学的な手法のこと。「納豆を食べた人が長生きした」というデータがあっても、本当に因果関係があるのかを検証するには、複雑なステップが必要になる。
画像解析技術を駆使した疫学研究
従来は調査票など紙をベースとしたデータをもとに結果と要因の関連性について仮説を立ててアセスメント(評価・査定)するという方法をとっていましたが、画像解析技術の研究が進めば離れた場所にいても対象者の食事内容を画像として取り込みデータを収集するということも考えられますし、その画像から対象者の感情まで推し量れるようになるかもしれません。
近年は統計的な解析においても機械学習の手法が取り入れられており、ある結果の要因をコンピュータが予測できるようになっています。「結果と要因」について仮説を立てる際に、これまでは研究者が要因となる要素を予測して、一つ一つ分析していたのですが、機械学習の進歩によって、「何が要因となり得るか」というところまで、AIに考えさせることも可能になってきています。
情報工学とデータサイエンスを緊密に組み合わせることで、食と健康に関する研究はこれまで以上に深みと精度を増すものと期待されています。
あらゆる分野に応用できるデータ処理技術
膨大なデータをどのように収集・処理して、そこからどのような知見を得るのかというプロセスは、疫学に限らずデータサイエンス全般に共通する基本プロセスであり、産業、金融、環境、娯楽など、社会のあらゆる分野に生かすことのできる技術です。
機械学習とかデータサイエンスと聞くと難しいと思うかもしれませんが、実は、健康や食生活など、私たちの生活に驚くほど近いところで生かされている技術なのです。スマートウォッチのような携帯端末に個人の健康データが集約され、スーパーの商品のバーコードを読み取ると、その日の体調に合わせた夕食のレシピが表示されるというようなことが当たり前に行われるようになるでしょう。
その日を迎えるためには若さと好奇心・向上心に満ちた皆さんの力が必要です。情報・データサイエンス学部でともに未来を切り拓いていきましょう。

Profile

片桐諒子 教授
千葉大学大学院情報学研究院情報・データサイエンス学部教授。2008年、千葉大学医学部医学科卒業。2013年、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻入学。2017年より国立がん研究センター社会と健康研究センター疫学研究部特任研究員、室長を経て、2024年より現職。博士(医学)。