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部局長挨拶

「データサイエンス」の未来を切り拓く

皆さんは「データサイエンス」という言葉から何を連想するでしょうか? Wikipediaには「データを用いて新たな科学的および社会に有益な知見を引き出そうとするアプローチのこと」といった説明が書かれています。このような短い説明からは,しかし,例えば,データサイエンスが様々な技術革新によって,最近ようやく現実のものになったことなどはわからないかもしれません。データサイエンスの実現に寄与した代表的な技術を三つ挙げておきます。第1は,身の回りのデータを網羅的にかつ大量に収集し,仮想空間でデータを新たに作り出すことまでをも可能にした,IoT(Internet of Things),無線通信,デジタルツィンといった技術群です。第2は,膨大なデータを高速に処理することを可能にした,富岳などのスパコンに代表されるコンピュータの進化です。第3は,データに潜む情報を効率的に引き出すことを可能にした,機械学習などのAI(Artificial Intelligence)技術です。これら三つは,相互にその進歩を促してきました。例えば,IoTや通信技術の進歩により大量のデータを収集可能になったことが,それを処理するコンピュータの進化を促し,コンピュータの進化が深層学習などの新たなAI技術の誕生を促す,といった具合にです。データサイエンスを深く理解するためには,これら周辺の技術についても知ることが大切です。

データサイエンスは一般には応用志向の学問であると捉えられていますが,データサイエンスという名称には「サイエンス(科学)」という言葉が含まれています。これは,データサイエンスの考え方に自然科学と共通する部分があることを表しています。自然科学とは,観測や実験に基づき自然界のルールを知るための学問です。一方,データサイエンスの本質は,データをじっと眺めて,その背後にはどのような法則が隠れているのか,どのようなルールによってデータが生み出されているのか,といったことを頭の中で様々に思い巡らす行為にあります。ちょうど,りんごの実が木から落ちるのを見てニュートンが万有引力の法則を発見したり,素数の並びを見てリーマンがリーマン予想を思いついたりしたように。データサイエンスは,コンピュータが自動処理するだけの技術ではなく,きわめて人間的な,また根源的な学問でもあるのです。

データサイエンスはこれからも様々に進化を遂げていくでしょう。「情報・データサイエンス学部/学府」は,データサイエンスを使いこなし,さらにはデータサイエンスの進化をも担おうという志を抱く皆さんのための学部/学府です。データサイエンスでは,統計学やAIを用いてデータに潜む情報を見つける能力(データサイエンス力),プログラミングスキル,計算機科学,アルゴリズム,あるいは情報通信技術を用いてデータを収集,加工,分析する能力(データエンジニアリング力),さらにはデータサイエンスを広く社会に応用・展開していく能力(データサイエンス展開力)が必要とされています。データサイエンス学部/学府では,これら能力を育むための幅広い科目群を用意しています。皆さんが自分なりにカリキュラムを組み立てて,それぞれの興味に応じた比率でデータサイエンス力,データエンジニアリング力,データサイエンス展開力を身に付けることを期待しています。

様々な試行錯誤を通してデータの背後にある法則・ルールを見出し,深い洞察力により現実の社会問題の真の原因を理解して,その解決案を提示するという,総合的な真のデータサイエンススキルを自分のものにするためには,狭い既成概念に縛られる必要はありません。皆さんそれぞれが,自分なりのデータサイエンスを探し,また解釈し,さらには自分なりの発見を通して,データサイエンスに新しいページを付け加える資格を持っています。「情報・データサイエンス学部/学府」に入学する皆さんと一緒に,データサイエンスの未来を切り拓く営みに寄与することができれば,私たち教員にとってそれ以上の喜びはありません。

大学院情報学研究院長
情報・データサイエンス学部長
大学院情報・データサイエンス学府長
塩田 茂雄

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